FC2ブログ

ブログパーツ
RSS|archives|admin

シネマ歌舞伎『大江戸りびんぐでっど』感想

2010.11.19 Fri
ooedo01.jpg


1年ってすぐですね。

2009年12月、歌舞伎座さよなら公演にて上演され、その模様を収録したものがシネマ歌舞伎として先月から公開されている『大江戸りびんぐでっど』の感想を。

宮藤官九郎が歌舞伎の花道をぞんびだらけにしたくて作ったぞんび歌舞伎。前評判は概ね大不評で、朝日新聞の声欄には「あまりのひどさに途中退場した」との投書まであったそう。このシネマ歌舞伎、実際に上演された舞台をそのまま録画したもので、映画用に撮り直されたものではありません。ゆえにお客さんの反応などもそのまま収録されています。歌舞伎と言えど撮り直したものじゃないのに2000円固定(レディースデーなどでも割引は一切ありません)ってちょっと高いんじゃないの、などと思いつつ。はたして。


あらすじ
今や昔の江戸時代、夫を亡くしたお葉は新島から単身江戸に向かい、売れないくさやを売っている。そこで同じ島出身の半助に出会ったりぞんび騒動に巻き込まれたりしていく。



ぞんびとねたばれにごちゅうい





江戸におかしな噂が流れている。夜な夜な生気のない死人のような者たちが徘徊し、生き物を喰らうという。まるで死人が蘇ったかのように。そんなことってあるわけない。

ooedo09_20101119172746.jpg

ぞんびじゃないよ、あたしだよ。
ベテラン女郎のお染さん(中村扇雀)。




って、でたーーーーー!!!!!
おなじみジョージ・A・ロメロ『死霊のえじき』の冒頭シーンのパロディ。
お染と大工の辰(中村勘太郎)。

ooedo02.jpg

障子にぞんあり。




ぞんび騒動の中、ぞんびにお札を貼ったりお祓いしたりするけど効果がない。
「魂がないからお札もお祓いも効かないんだ。」

ooedo11.jpg

ならばぼくがきろう。
流浪の剣士、四十郎(坂東三津五郎)。




どうやら亡き新吉が作ったくさや汁を死人にかけると死人が蘇るらしい。そして、人間にくさや汁をかけておくとぞんびは自分たちの仲間だと思って襲ってこない。これを利用して半助(市川染五郎)がある商売を思いつく。

ooedo03.jpg

ぞんびにだんすをおどらせよう。
とっても楽しいダンスと音楽。曲はZAZEN BOYSの向井秀徳。ふすま絵はしりあがり寿。




半助はぞんびたちを引き連れ、お葉(中村七之助)と共にぞん材派遣商売を始める。そんな中、遊郭の看板女郎喜瀬川(中村福助)が客と心中したけれど、自分だけが生き残ってしまったからぞんびになったお染に死体のフリをして欲しいと持ちかけてきた。お染は「あたしゃ生きてる人間がバカに見えますよ」と言い放つ。

ooedo05.jpg

死人に死人のフリさそう。




「ぞんびには魂も感情もない」と言いつつ、とても熱い魂と優しい心を持ったぞんびたち。そんな中で、ぞんびと人間の立場がゆっくりと入れ替わっていく。

ooedo04.jpg

ぞんびになってた新吉さん(中村勘三郎)。お葉のことを半助に託し死んでいく。




自分の不甲斐なさにお葉を突き放す半助。それでもお葉は半助の元に戻ってくる。でまかせばかりの半助、半人前の半助だけれど、君への愛のためなら嘘をも貫き通そう。

ooedo12.jpg

死んでも君を守るから。




生き生きとした死人たち。死人のような人間たち。生と死の境があいまいになり、いつしか逆転する。その構造はまさしくロメロのゾンビ精神そのもの。半助の「俺は今まで死んでたようなもんだから」の言葉が胸に刺さります。

私はこれまで歌舞伎は一度も観たことがなくて、失礼ながら役者さんも全然知りませんでした。ゆえに歌舞伎作品へのパロディや、それぞれの役者さんならではのパロディなどが理解できなかったのが悔やまれます。しかしながら、歌舞伎ファンの方からしたらとんでもない作品であるということも何となく感じます。本編前に流れた『我が心の歌舞伎座』の予告編からも垣間見える、伝統ある世界、伝統ある舞台のしめくくりにどろどろぞんびを持ち込んでしまう、それは許されないことだったのかもしれません。朝日新聞に投書された方もきっとそうだったんでしょう。

それでも私にとっては素晴らしいお芝居、素晴らしいゾンビものだったのです。特にゾンビと人間の境があいまいになってしまったり逆転したりする部分は『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のラストや『ゾンビ』の暴走族がゾンビに襲われるシーン、はたまた『ランド・オブ・ザ・デッド』のラストシーンを彷彿とさせ、生きていることの意味を考えさせられます。ぞんび一人一人の個性や心に響く言葉、そして終盤のどんでん返し。これまでは意志を持ったゾンビものはあまり好きではなかったのですが、この作品を観て初めて、意志のあるゾンビもいいなと思えました。

ゾンビものって、ものすごい人間ドラマで。そのゾンビものを歌舞伎(もしくは舞台)で表現することによって一場面一場面が、一言一言がとても重く、心に訴えかけるものになるんです。映画のようなスプラッターシーンはありませんが、私にはぞんびたちが人間を襲うシーン、鮮血が飛び散っているように見えましたよ。

また、この作品を語る上でゾンビ=派遣、ゾンビ=障害を持った方、という見方をして「派遣の人や障害を持った人への配慮が足りていない」と批判している人がいますが、その発言こそ配慮が足りていないのではないでしょうか。この作品の派遣は現在の社会の派遣の構造には当てはまらないということは最後まで観ればわかるし、障害を持った方を彷彿とさせるものは表に出してはいけないのでしょうか。穿った見方をして人を傷つけているのは自分の方ではないでしょうか。

先月16日から公開が始まっているこの作品、大阪では残すところもう1映画館のみの上映になっています。シネマ歌舞伎はDVD化もされないということなのでお早めに映画館へどうぞ。ちなみに大阪なんばパークスではプレミアムシアターでの上映となっています。見る度に新しい発見があるこの作品、私は既に2回観ましたが上映終了までにあと2、3回は観たいなと思っています。



追記:まだまだ考察できてませんでした。なるほどなあ・・・
M.H.Square.:「ぞんび」=「はけん」のリアリズム 観る者を試す「大江戸りびんぐでっど」


スポンサーサイト



Theme:ゾンビ映画 | Genre:映画 |
Category:ゾンビ | Comment(0) | Trackback(0) | top↑ |
<<『キャサリン』プレイ日記開始のお知らせ | HOME | 『スペースチャンネル5』レビュー>>
name
title
mail
url

[     ]
Trackback URL
http://painomisan.blog91.fc2.com/tb.php/24-635af8ae